手塚治虫 1973〜1974 『ばるぼら』 最低で最高のヒロイン

最低で最高のヒロイン。薄汚くて、破廉恥で、自由で、高貴な女。

こういう女に付きまとわれて、へきえきして、振り回されて、離れられなくて、頂点を極めて、破滅して、捨てられて、みじめったらしくしがみついて、追いすがって、ぶっ殺されかけるという夢みたいな展開。主人公は売れっ子耽美系作家だが自らの変態性欲を持て余し何もかもに退屈しているといういけ好かない人物で、DVの常習犯というクズのため、痛い目にあっても当然の報いに感じるというか、むしろ手ぬるい。こういう話で甘美に陥らずにユーモラスに踏みとどまるのは手塚治虫の手腕か。

ばるぼら大正義。

なんだろう、このばるぼらの魅力は。浮浪者でヒロインというのがまず普通ではありえないが、そのありえなさがばるぼらの魅力の拠り所になっている気がする。フリーターとか、ニートとか、そういうのではダメだ。この、「社会を完全に逸脱しているのに人間的な温もりに溢れている」感は浮浪者にしか出せない気がする。

ハスッパなくせにうぶで、ワガママなのに自己犠牲を厭わない。ギャップにやられっぱなしだ。

記憶を取り戻したばるぼらと余命宣告をされた主人公が草ッ原でする会話。

「先生 ほんとのこというとね オレが先生を殺すことになってんだ 時間がきたら」「そういわれてきたんだ 方法はまかせるってさ」

「そんなことだろうと思ってたよ」

たまらんですよ。

大傑作と思わない。

でも読んだ人の心の何処かにばるぼらが棲みつく漫画と思う。